最初に気づいたのは、朝だった。
昨日買ったはずのおにぎりが、
机の上に二つ並んでいた。
確か、夜に一つ食べたはずだった。
袋には二つ入っていたから、
一つ残っているなら分かる。
でも、二つあるのはおかしい。
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気のせいかと思った。
その日も同じ店で、おにぎりを二つ買った。
帰って、ひとつ食べる。
もうひとつは机の上に置いたままにした。
次の日の朝。
やはり、二つあった。
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今度は、二つとも食べてみた。
確かに食べきった。
包みも捨てた。
何も残っていない。
それなのに、朝になると。
また、机の上に二つ並んでいる。
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不思議だったが、困ることはなかった。
むしろ助かっていた。
朝、何も考えずに食べられる。
味も、どこか安心するものだった。
ただ、気になることが一つあった。
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そのおにぎりは、いつも同じ味だった。
特別に美味しいわけではない。
でも、なぜか最後まで食べてしまう。
どこかで食べたことがある味だった。
—-
ある日、ふと思い出した。
子どものころ。
家を出るときに渡されていた、おにぎり。
少しだけ形がいびつで、
塩加減も日によって違った。
あの味だった。
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その日、ひとつを残したまま、
朝に増えたもうひとつと見比べてみた。
すると、少しだけ形が違っていた。
昨日からあったものより、
朝あらわれたほうが、
ほんの少しだけ不揃いだった。
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増えているわけではない。
毎日、新しく作られている。
そう思った。
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それからは、必ず一つ残すようにした。
全部食べてしまうと、
何かが途切れてしまう気がしたからだ。
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机の上には、今日も二つのおにぎりがある。
一つは食べる。
もう一つは、残す。
—-
残したほうを手に取ると、
少しだけ、かたちが違う気がした。